新約聖書の豊穣神話

 新約聖書の豊穣神話は、1世紀に成立し、4世紀初頭に完成しましたから、時期的に見れば、ここに入ることになります。新約聖書では、豊穣「神話」から、現実の歴史的な「出来事」へと転移しているところに最大の特徴があります。その出来事は、四福音書が証しする歴史上の「人間としてのナザレのイエス」出現の出来事です。
 このイエスは、豊穣神話における「太陽」にあたります。この太陽は、十字架刑によって葬られます。「昼の十二時になると、地の上が全部暗闇になって、三時まで続いた」(マルコ15章33節)とあるのに留意してください。イエスは、「わが神、わが神、どうして私を見捨てたのですか」と叫びます。イエスは、死んで陰府に下り、そして、三日目に、陰府から復活することによって、人類を襲う宇宙的な災害と、これに関連する飢饉と剣と疾病と罪、すなわち人類を襲う「死」の力を贖い清める霊的な力をもたらすのです。その霊的な働きは、復活のイエスに信託する人それぞれに、身体的と霊的に働きかけるものです。太陽が陰府へ降り、そこから復活することを模したこの出来事は、宇宙を創造し支配するイエスの父なる神によって生起した出来事です。 イエスはその神の御子であり、その御子の死と復活に与ることができるように働くのが、イエスを信じる人たちにに働く聖霊です。イエスの出来事は、このように、三位一体の神の働きに支えられています。
                   豊穣神話へ