6章 古生代
5億4100万年前〜2億5200年前)
■古生代について
 ここから宇宙と地球の歴史の「最新の」時代区分にあたる「顕生代」に入る。宇宙の始まりから逆算すれば、「顕生代」とは現在につながる「最終」段階である。150億年を経ている宇宙の始まりから見れば、顕生代は<わずか>5億4100万年前から始まったことになる。「最新」とは言え、「顕生代」は5億4100万年前から現在までのことであるから、これも「古生代」(5億4100万年〜2億5200万年前)と「中生代」(2億5200万年〜6600万年前)と「新生代」(6600万年〜現在)の三つに分かれることになる。古生代もまた下記のように区分される。
 古生代をさらに細分すれば、始めの時期を「カンブリア紀」と言う。「古生代」は「カンブリア紀」(5億4100万年〜4億8500万年前)/「オルドビス紀」(4億8500万年〜4億4300万年前)/「シルル紀」(4億4300万年〜4億1900万年前)/「デボン紀」(4億1900万年〜3億5900万年前)/「石炭紀」(3億5900万年〜2億9900万年前)/「ペルム紀」(2億9900万年〜2億5200万年前)の六つに区分される〔『地球全史スーパー年表』〕。
■カンブリア大爆発
  エディアカラ紀のエディアカラ動物群の時代は3000万年足らずで終わり、今から5億4100万年前〜2億5217万年前の古生代に初めて、単細胞微生物が多細胞生物へと進化を遂げて、現在の生物の先祖につながることになる。
 カンブリア紀に初めて「眼」を持つ動物群が突然に現われた。この時期の地球は、南極を中心にゴンドワナ大陸が東西に広がり、これに包まれるように、北側にバルティカ大陸、シベリア大陸、その西にローレンシア大陸などがあった。
 1909年にアメリカの古生物学者チャールズ・ウォルコットが、カナダのブリティッシュコロンビア州のステファン山ふきんで、「バージェス頁岩動物群」の化石を発見した。これらの化石は、オパビニアやアノマロカリスのような節足動物門とイカやタコの類に属する軟体動物門に分類される。それらの特徴は、外皮が硬い硬組織で、この硬組織をテコに筋肉があり動くことが可能であり、また硬組織からトゲを形成することもできた。5億2100万年前を境にして、現在のミミズ、ナメクジ、貝、イカ、タコ、昆虫、サソリ、ウニ、ヒトデ、クラゲ、イソギンチャク、クラゲなどなどの祖先に当たる諸部門の動物が現われ、人類の進化にいたる最初の段階を迎えたことになる〔『地球46億年の旅』9号10〜13頁〕。
 特に注目すべきは、光合成から発達した結象を可能にする「眼」を具えるようになったことである。眼の発達はわずか40万年足らずの間に<突如として>起こった。これは陸地の成分が海に溶けて、海の成分が変化することで、硬組織を形成したり複眼細胞を発達させる成分が供給されたためと考えられる。しかもこのような海洋成分の大変化は9億年間に一度しか起きない現象で、これが眼の誕生を可能にした〔『地球46億年の旅』9号17頁〕。このような突然の変異が二度起こったと考えられる。眼の発達は、食物を補足する強力な武器となり、同時に、補足から逃げるための必須の機能となった。進化に伴う「食うか食われるか」の闘争の始まりである。
 ほとんどの生物は10センチほどまでの大きさであったが、中でもアノマロカリスは1メートルもの長さを持つ巨大なエビ状の動物で、このカンブリア紀の食の頂点にいた生物である。これの全体像が化石から形成されたのは、1985年のことである。
■三葉虫
 カンブリア大爆発の時代を古生代最後のペルム紀後期まで3億年もの間生き延びたのが三葉虫である。これは全長5ミリから90センチまでの様々な形態の虫であるが、硬い殻で覆われていたために化石として残りやすく「化石の王様」と呼ばれている。三葉虫は貝のような一枚の殻ではなく、戦車のキャタピラのようにギザギサでしかも硬い殻で覆われていたために動きが自由で、しかも眼を具えていたから、海中の岩陰や泥の中に身を隠して敵から逃れることができた。この虫は脱皮することができたので、甲羅で覆われていたのに、身体を成長させることができたから、様々な形態へ進化することになる〔『地球46億年の旅』10号8〜12頁〕。
■脊椎動物と脳
 カンブリア紀に誕生した生物で、現在の人間に直接つながるのは脊椎を持つ魚類である。ミロクンミンギアは2〜3センチほどのメダカのような魚であるが、1999年に中国雲南省でその化石が見つかり、この化石は5億2100万年前の地層から発見されたから「最古の魚」と言われる。魚類などの脊椎動物は、小さなものから後には3メートルを超える大きなものまで様々な大きさに進化することができた。脊椎には中枢神経があり、これが頭部の眼と脳へつながっているために、敵を察知して素早く逃げる方法と場所を判断することができる。ミロクンミンギアに脳があったことを確認できたのは2012年になってからで、2013年に日本の海洋研究開発機構の田中源吾らは、カンブリア紀のアラルコメネウスという現在のエビあるいはサソリに近い節足動物の化石をマイクロX線で調査して前脳と中脳と後脳の痕跡を確認した。
 カンブリア紀の生物は、アラルコメネウスのような節足動物とミロクンミンギアのような脊椎動物に大別することができ、節足動物からは現在の昆虫類やイカやタコの軟体動物が派生し、脊椎動物からは、カエルやは虫類や哺乳類が誕生することになる。脊椎を持つ魚類は、ほんらい「食べられる」側の動物だったのが、身体が大きくなり、特に陸上に進出することが比較的容易であったから、節足動物を餌にしてその骨格を発達させ、これに伴い頭部を頭骨に守られた脳が発達した。魚類の一部が陸地に上がり、両生類やは虫類となり、2億2500万年前に哺乳類が出現し、およそ700万年前に人類へと進化することになった〔『地球46億年の旅』10号16〜22頁〕。
■オルドビス紀の生物大放散
 オルドビス紀は4200万年も続きながら、その存在は19世紀後半になってから発見された。カンブリア紀に続くこの時代も、生物は約4000万年の間に着実に進歩を続け、多様化した。カンブリア紀の食の頂点にあったアノマロカリスに代わり、オルドビス紀の生態系の頂点に立ったのはオウムガイ類であった〔『地球46億年の旅』11号18〜25頁〕。
 この時期の地球は比較的温暖で、海面は現在より100メートルほど高く、摂氏40度くらいの温度であったが、オルドビス紀の後期にはこれが28〜32度までに下がって収まった。その間に、珊瑚(サンゴ)などの骨格生物が繁殖した。骨格生物は、水中のプランクトンなどの有機粒子を食べて増殖し、それらが積み重なって「礁」(しょう)を形成した。珊瑚礁などの複雑な構造は小さな魚の絶好の隠れ家となり、ウミサソリ、フディシ類、三葉虫、頭足類(イカ、タコ、オウムガイ)、腹足類(巻き貝)など多種多様な動物が生息する環境を作ったことになる。この時期の生物は、こうして広がったために「生物大放散事変」と呼ばれる。この大放散は、この時期の大陸が南極から赤道付近に集まり、しかも分裂・離散したことが、生物の放散に都合がよかったとも考えられている〔『地球46億年の旅』11号8〜11頁〕。
 オルドビス紀に捕食の頂点にいたのは頭足類のオウムガイである。「頭足」とは頭から足が幾本も出ているイカやタコ類のことである。この時期のオウムガイは3500種類に及び、最大のものは全長10メートルもあって、海水を体内から噴き出すジェット推進を用いて素早く泳ぐことができた。カラストンビと呼ばれる強い顎と歯を使って三葉虫の殻をも砕いて食べることができたらしい。このオウムガイも4億3000万年前のシルル紀の中頃には衰え初めて、約2億130万年前には現在のオウムガイ1種類になった。これがらせん状に曲がった現生のオウムガイであるが、カタツムリのようなその姿から、往事の巨大な姿を想像するのは難しい。しかし、イカやタコは意外と(?)大きい頭脳神経を持ち、カメラ眼を持つ知性のある動物らしい〔『地球46億年の旅』11号18〜21頁〕。
■退化?した生物
 カンブリア紀の巨大なエビ状のアノマロカリスと言い、オルドビス紀の体長10メートルのオウムガイと言い、現在わたしたちが見るエビや巻き貝からは想像もつかない大きな姿で、それぞれの地球時代を3000万〜4000万年もの間、生物の頂点に君臨した。神は、それぞれの生き物に、その全盛時代を与えてくださっているのだろう。しかもそれぞれが、それぞれの仕方で、生物の進化に貢献しているのだから不思議である。人類は誕生してから「まだ」700万年ほどであるが、聖書に預言されているように、現生人類も何百万年か後には、進化による分岐によって、ホモ・サピエンスの終末を迎える時が来るだろう。しかし、人類は、はたして3000万年も生き延びることができるのだろうか?
■脊椎魚類の進化
 オルドビス紀の中頃から脊椎の魚類が登場するが、それは「アランダスピス」と呼ばれる全長15〜20センチほどの魚で、前半身が硬い骨板で覆われていたから「甲冑魚」を呼ばれる。しかし、この魚には顎(あご)がないから捕食することができず、海底の泥に含まれる有機物を食べていた。1986年に南米ボリビアで発見されたサカバンバスピスというウナギのような魚も同じで顎がない。捕食もできず泳ぎも早くないが、これらには後に大切な働きをする「うろこ」があった。とにかく魚類はこれらから始まったことになる〔『地球46億年の旅』12号8〜13頁〕。
■オルドビス紀の大量絶滅
 4億5800万年前の頃、ロディニア超大陸が南北に分裂し、ローレンシア、バルティカ、シベリア、ゴンドワナの4大陸に分裂することになる。中でも重要なのはゴンドワナ大陸で、現在の南アメリカとアフリカとインドとオーストラリア、それに南極大陸がこれに含まれていた。「ゴンドワナ大陸」の最初の提唱者はウィーン大学のエドアルト・ジュースである〔『地球46億年の旅』12号15頁〕。
 ところががこの大陸の分離が、海洋生物に致命的な打撃を与えることになる。ゴンドワナ大陸の極地に近い地域に氷河が形成されることで、北アフリカ、ブラジル、アンデス地方にも氷河が広がり、2000万年の間続く氷河時代が訪れたのである。この氷河到来の原因は明らかでない。オルドビス紀(4億8500万年前〜4億4300万年)では、始めの頃には温暖化が進み、後期では氷河期に転じたから、氷のために海水が不足したことが海洋生物絶滅の原因ではないかと思われる〔『地球46億年の旅』12号14〜17頁〕。
■五大絶滅期
 オルドビス紀から8000万年前の白亜紀の終わり頃までの間に、オルドビス紀末/デボン期後期/ペルム紀末/三畳期末/白亜紀末の5度に渡って生物の大量絶滅が起こっている。これらの絶滅は急激な寒冷化と逆に温暖化による影響が関係して海水が減じたり増加したりしたために、水中の酸素が不足して、これに適合できなくなった生物が死滅したのである。ちなみに、原生代にもカンブリア紀末にも、シルル紀、石炭紀後期、白亜紀後期に、五大絶滅以外にも大量の死滅が生じているから、全部を併せると地球の生物は10回もの絶滅に襲われてきたことになる〔『地球46億年の旅』12号20頁〕。
■シルル紀
 さてわたしたちは今、地球史で言えば、顕生代の中の古生代の中のシルル紀(4億4340万年〜4億1920万年前)にいる。この時期、シルル紀の海で捕食の頂点にいたのは巨大なウミサソリ類である。45センチもあるハサミを二つ具え、泳ぐためのひれを二つ持ち、複眼二つと光を感知する単眼一つの2メートルもあるこの節足のサソリは、SFに出てくる怪物そのものである。ただし、このサソリと現在地上にいるサソリとの関係はまだよく分からないらしい〔『地球46億年の旅』13号10頁〕。このサソリもデボン紀には絶滅してしまうことになるが、それでも2000万年以上もの期間、海中の王者だったことになる。
 このサソリ類はイアペスタ海という現在は喪失した海域に多く生息していた。この時期は大陸の移動が激しかったようだ。オルドビス紀からシルル紀にかけて、ローレンシア大陸とバルティカ大陸の間にあったのがイアペスタ海である。ところがデボン紀になると、二つの大陸が衝突して合体し「ユーラメリカ大陸」になった。このために二つの大陸の狭間にあった海は現在喪失してしまった〔前掲書16頁〕。
 もう一つシルル紀で生じたのは、植物が陸へ上がってきたことである。イアペスタ海の海岸線付近の海は比較的浅かったらしい。そこから緑の海藻類が陸地に進出した。「維管束植物」で、これが後に陸上で種子植物やシダ類へと進化した。維管束植物の他にコケ類もこの頃陸地に上陸している〔前掲書24頁〕。
■デボン紀
  デボン紀(4億1900万年前〜3億5900万年前の6000万年間)は「魚の時代」と言われ、特に無顎類から進化した板皮(ばんひ)類の魚の全盛期であった。特にデボン紀の4億400万年〜3億5890万年には、先のオウムガイから進化して、錐の形から約500万年かかって進化してらせん形の殻を巻くアンモナイトが大量に発生した。ただしこのアンモナイト類は3億4000万年もの時代を生きて中生代の終わり頃(1億年前)に絶滅する〔『地球46億年の旅』14号8〜13頁〕。
 デボン紀で特筆すべきは、シルル紀以前の無顎類の魚が頑丈な顎を持つ板皮(ばんひ)類の魚へ進化したことである。脊椎で顎を持つ魚類は、その丈夫な顎で獲物を漁り巨大化した。ダンクルオステウスは6〜10メートルもある巨体で、デボン紀の魚類の捕食の頂点にいた。しかし、約1億年後の石炭紀の前には絶滅した。理由はよく分っていない。板皮類の魚はアオザメやスズキやシーラカンスの先祖である。ところで、最近2008年に胎生のイタチザメと卵生のトラザメのふた種類のサメが発見されて、胎生と卵生とどちらが早くどちらが遅いのかが問題になっている〔『地球46億年の旅』14号19頁〕。
■大山脈の形成と動植物
 4億4340万年前のシルル紀から3億5890万年前のデボン紀には、無顎類と有顎類の両方の魚類が出そろったために、あらゆる魚が海に生息した唯一の時代である。同時に、約4億2000万年前に、ローレンシアとバルティカとアバロニアの三つの大陸が衝突した結果ユーラメリカ大陸が形成された。大陸の衝突によって隆起した巨大な山脈から多量の雨が流れ下り、大河が生まれ、海岸に沿って湿地帯が形成された。大河は淡水で、河口付近には海水と淡水の混じり合った地域が生じた〔『地球46億年の旅』15号14〜19頁〕。
 そこは比較的浅瀬で、凶暴な深海の捕食者が入り込めないために、逃れるように集まる魚たちがいた。浅瀬で水量が一定せず、酸素が不足しがちな淡水の河口付近は、魚類にとって過酷な場所だったが、そこに住み着いた魚たちは、浅瀬の泥や藻などの障害物をかき分ける強い鰭(ひれ)を発達させることで、その海域に住み着く術を手に入れた。これが肉鰭(にくき)類で、その代表がユーステノプロテンである〔『地球46億年の旅』15号8頁〕。肉鰭類の走りはオステオレピスで、これがデボン紀半ば頃(3億9300万年〜3億8000万年前)に頑丈な鰭を持つユーステノプロテンへと進化した。
 山脈から流れる大河付近では、シダ植物が群生するようになり、これらの植物は徐々に大きくなり、樹木に近い裸子植物の前期の姿になった。石炭紀(3億5890万年前〜2億9890万年前)には植物の進化が進み、高さ20メートルで直径1メートルのアーキオプテリスが育った〔『地球46億年の旅』17号8〜15頁〕。それらの植物の茂みにシルル紀の終わり頃には、ヤスデ類やクモ類、ムカデ類、翅(はね)を持たない昆虫類などが生息し始めた。
 ユーステノプロテンは、3億8500万年前に出現したが、2000万年後の3億6500万年には鰓から発達した四肢動物になって、上陸していた。3億6500万年前に現われたイクチオステガとアカントステガは、海陸両方の両生動物であった〔『地球46億年の旅』16号18〜25頁〕。さらに3億4000万年前には、肺のみで呼吸する爬虫類が現われて、ここに完全な陸上生物が出現したのである〔『地球46億年の旅』15号20〜23頁〕。爬虫類は海と陸の両生類から地上に卵を生むものへ進化した過程で生まれた(3億5890万年前〜2億9890万年前)〔前掲書20〜23頁〕。
■F−F境界の危機
 デボン紀の中頃、すなわちデボン紀のフラニアン期とファメニアン期の間に気温と水温が低下し、海中の酸素濃度も減少する時期があった。このために、それまでの珊瑚類、三葉虫、貝類、無顎類、板皮類などがほとんど絶滅する事態になった。二つ時期の名前から、これをF−F境界と言う。陸地に近い浅瀬ではなく、深海に生息した生物がこの被害を受けた。
 FーF境界の原因は、この時期に地球内部のマントルが上昇したという説などあるが、まだはっきり分かっていない。またその期間も長ければ1000万年まで諸説がある。1995年に京都大学院地球科学研究科を中退した平山廉(れん)氏は、デボン紀後期にシダ植物が巨大化し、大量の二酸化炭素を消費したままその遺体が海岸に運ばれ埋没した(石炭紀の始まり)と考えた。その植物遺体が化石化した黒色泥岩(でいがん)から、この時期大量の二酸化炭素が消費されたことが分かったのである。平山氏は、このため大気の二酸化炭素が希薄になり、その結果温室効果が失われて地球が寒冷化し、海中の酸素濃度も減少したと考えている〔『地球46億年の旅』16号13頁〕。確かにシルル紀からデボン紀を経過して石炭紀には、空気中の二酸化炭素の濃度が減少を続けて、石炭紀にはカンブリア紀の7000濃度からなんと500濃度まで低下している〔『地球46億年の旅』17号22頁〕。まだ大気中の酸素濃度は、石炭紀の20濃度から増大を続けてペルム紀には最高33濃度まで上昇している。両生類や爬虫類が大型化した時期と酸素濃度の上昇が関連しているのが分かる〔『地球46億年の旅』17号10頁〕。
■ゴンドワナ氷河期
 3億5000万年前〜2億9890万年前まで、南極に位置するゴンドワナ大陸を拠点に大規模な氷河が形成され始めた。この期間中、南極を拠点とする大氷河は、増大と縮小を繰り返した。その結果、赤道の熱帯と南極の間に季節の差が著しくなり、これが石炭紀の陸上の植物や動物に大きな影響を与えたと思われる〔『地球46億年の旅』17号22〜25頁〕。
■昆虫の時代始まる
 デボン紀と石炭紀(約4億2000万年前〜約3億年前)の間に、地上にはシダ植物が高々と茂り、緑豊かな世界ができた。4億年前に、植物に続いて陸地に上陸したのが、数ミリの地を這う昆虫の祖先だった。しかしそれらは翅を進化させ、ついに70センチもの巨大トンボや10センチものゴキブリが出現する。これが石炭紀の時代で、この時期は「昆虫の時代」と呼ばれる。森林の中の湿地帯には、大小の昆虫が群がっていたのである。
 昆虫はもともと海中に住むエビやカニなどの甲殻類に近かったと推測されている。その中でも特にミジンコやフジツボなど鰓脚(さいきゃく)類が直接の先祖らしい。4億年前のデボン紀前期のトビムシ類の化石がスコットランドで見つかっている。カナダではアイシュアイという5センチほどの環状のしわと10対の足のある昆虫が見つかっている。
 3億年ほど前の石炭紀の中期にゴキブリやカメムシやオオトンボの先祖が発生している。2億9800万年に始まるペルム紀には、現在のトビムシ、シミ、カゲロウ、トンボ、シロアリ、ゴキブリ、バッタ、ノミ、シラミ、カメムシ、カブトムシ、蜂、蝿などの先祖が発生する。これらの昆虫は、なんと3億年近くも生き延びてきたのである。
 昆虫がこれほど長く生存を続けることができたのは、翅を進化させて空中を自由に飛ぶことができたから、爬虫類などの外敵から逃れて、産卵の場所も小さな体を養う食物の場所も選ぶことができたからである。翅は鰓から進化したと考えられている。もう一つは、昆虫の幼虫から成虫への「変態」がある。カゲロウの幼虫のように水中で生息し、成長すると陸地と空へ飛翔する種類もあり、蛹の形で地中に潜み、全く異なる生態の蝶や蝉になる完全変態の昆虫もいる。こうして彼らは環境に適応してきたのである。
 またペルム紀は、植物が大量に二酸化炭素を消費したために、大気中の酸素濃度が著しく上がり、現在20%ほどの大気の酸素濃度が、ペルム紀では30〜35%もの濃度であったようだ。このことが昆虫の大型化をうながし、石炭紀末期(3億年前)には70センチもの巨大トンボ、「メガネウラ」や2メートルもある巨大ムカデのような「アースロプレウラ」などが飛んだり這ったりしていた〔『地球46億年の旅』18号7頁/14〜15頁/22〜23頁/26頁〕。
■パンゲア大陸
 今から3億年〜2億5000万年前のペルム紀には、それまでの南のゴンドワナ大陸と北のユーラメリカ大陸とが地殻の移動によって合体し、ここに地球上に唯一のパンゲア超大陸と唯一のパンサラッサ海ができた。この説を最初に唱えたのはドイツの気象学者アルフレッド・ウェゲナーで1912年のことである。この説は最初、笑いものにされたが、死後30年以上経って、彼の大陸移動説が正しいことが諸大陸に共通する化石やプレートテクトニクス理論によって確認された〔『地球46億年の旅』19号8〜13頁〕。超大陸では、巨大な山脈で湿った空気が遮られるため中心部に広大な乾燥地帯と砂漠地帯が生じた。生物も、水辺で暮らす四肢動物から「単弓類」と呼ばれる巨大な爬虫類に近い動物が出現した。植物もシダ類から種を運ぶ乾燥に強い裸子植物へ変容した。
■単弓類
 単弓類には、背中に大きな帆の形の羽を具えたエダフォサウルスとディメトロドン、巨大な爬虫類に似たカセアやキノグナトゥスなどがいた。しかしこれらは現在の爬虫類の祖先ではなく、両生類から分岐して、爬虫類とは異なる発達を遂げて、その後哺乳類となるから、単弓類こそ遠い人類の先祖だったことになる〔前掲書14〜15頁〕。
 一方広大なパンサラッサ海洋では、サメ類が海の王者として君臨していた。サメの姿は比較的変化しないように見えるが、卵生類と胎生類のふた種類があり、姿形も少しずつ異なることで3億年もの間進化し続けてきたことになる〔前掲書20〜24頁〕。
■古生代末期の大量絶滅
 古生代の最後のペルム紀(Permian)から中生代最初の三畳紀(Triassic)にかけて、地球上最大の生物の大量絶滅が生じた。それはほぼ2億6500万年前に始まり、三畳紀の終わり頃、今から約2億年前までの間に起こった。この大量絶滅は、地球の寒冷化と地球内のマグマの大噴出の二つの段階を経て生じたと考えられている。
 その第一段階は、ペルム紀の終わりと三畳紀の始まりのPーT境界で、2億5200万年前のことである。第二段階は三畳紀の終わりで、今から約2億年前のことで、この時の絶滅は、地球内のマグマが噴出する大噴火によって生じたと思われる。三畳紀とジュラ紀の境界なので、これをT−J境界と言う。したがってP−T境界からT−J境界までの約5000万年の間にそれまでの地球上の生命体と以後の生命体は大きく入れ替わることになった〔『地球46億年の旅』20号8〜13頁〕。
■P−T境界の寒冷化
 地球の寒冷化を引き起こす原因となったのは、一枚岩のパンゲア大陸の出現である。これの形成によって、大陸間の海洋で生じていた地殻プレートの沈み込みが、弾力を失い、地表の上部マントルが、内部へと折れ曲がって沈み込んでいった。地殻のこの沈み込みは、上部マントルとその下部マントルとの境界にまで達して、そこで蓄積された大量の地殻が、一気に地球内の外核へ落下したと考えられる。
 ところが、外核は、熱い溶岩の対流による地球の磁場形成の大事な役割を果たしている場所である。そこへ地殻プレートの巨大な落下が生じたために、外核内の対流に乱れが生じて、その結果、地球の南北の地磁気が、反転する現象が生じたのである。これを「イラワラ事件」と呼ぶ。地球の磁場の逆転を最初に発見したのは、地球物理学者で山口大学の学長であった松山基範で1926年のことである。このイラワラ事件は、ペルム紀の中頃に始まって、断続的に三畳紀の終わりまで起こった〔『地球46億年の旅』20号10〜11頁〕。
 地磁気の逆転によって、地球に降り注ぐ宇宙線(放射能)を遮る磁場が弱くなり、このため銀河宇宙線が地球に降り注ぐことになった。宇宙線は、大気中の分子に帯電させるから、これによる雲が大量に発生することになる。だから、イラワラ事件は、地球上を黒雲が覆う結果をもたらすことになった。これが地球の寒冷化の原因である。氷河の形成のために、ペルム紀の終わりの海面水準は、顕生代で最も低かったことが証明されている。
 この海水準の低下と寒冷化で海に住んでいた脊椎動物の70%ほどの種が絶滅し、陸上でも昆虫類などに大量の被害が出た。この絶滅が二段階で生じたことは1990年代になって分かったことであるが、このような境界の原因にはまだよく分からないことが多い〔『地球46億年の旅』20号13頁〕。
■地上の大噴火
 ペルム紀の地球の地殻の内部落下は、地球の寒冷化で終わらなかった。落下で生じた地球内の外核が巨大な「スーパープルーム」現象を起こしたからである。溶融した溶岩の巨大な固まりが、キノコの頭のようにマントルを突き破り、陸地に噴出することで巨大な噴火を起こしたのである。その最初の噴出はペルム紀末期に現在のシベリアにあたる地域で、50キロメートルに及ぶ大噴火となった。噴き出したマグマは、2000メートルの高さに達したと考えられる。この大地の裂け目が次々と100万年間も続いたのである〔『地球46億年の旅』20号14〜15頁〕。
 噴火の塵は空を覆い、光を遮り、地表は寒冷化し、海中で光合成をする生物に壊滅的な打撃を与えた。スーパープルームによる火山性ガスと粉塵が大気を覆い、光合成する生物が消滅したことで、海は無酸素状態になり、数百万年続いたこの変動で、カンブリア大爆発で始まった生物はほとんどが消滅し〔前掲書34頁〕、古生代は終わりを告げた〔前掲書18〜20頁〕。
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