■最終氷河期から温暖化へ
わたしたちは新生代の第五期「更新世」(258万年前~1万1700年前)から、最後の時期、すなわち「完新世」(11700万年前~5500年前)までの時代に入ることになる。約60万年前に始まる寒冷化は、今から約2万年前に最終氷期を過ぎて、地球は急激な温暖化へ向かうことになった。氷河が溶けて海水面が90~120メートルも上昇した。このために、シベリアとアラスカの間は海になり、南アジアの海面の上昇で島々が残り、アジア大陸の東では日本列島が、西ではイギリスが、大陸から切り離されることになった。北アメリカやヨーロッパの氷河が後退して、この地方に森林がひろがるようになった。更新世の末期にはこれらの地域にマンモスや大角シカがまだ生息していたが、これらも姿を消すことになる。
ただし、12000年前に急激な寒冷化が起こり、その直後から気温が急激に上昇し始めた。これが更新世と完新世の境界になる。寒冷化と温暖化の周期は、地球の軌道が円形と楕円形の間を9万6000年周期で変動しており、地球の自転軸の傾きも21・5度から24・5度の間を4万1000年周期で移動しているから、これらの総合的な作用(ミランコビッチ・サイクル)で数万年単位で気候変動が生じることになる。
また、1万2000年ほど前から約1000年続いた急激な寒冷化の原因は、隕石の衝突説や北米大から大量の淡水が大西洋に流れ込んだためという説もあるが、よく分かっていない〔『地球46億年の旅』45号8~11頁〕。
■生態環境の変化
地球の温暖化は、人類に恵みをもたらした。沈んだ低地は、魚類や貝類の豊富な食料を提供し、そこに集まる動物たちをも捕獲することができた。また、森林地帯や草原は、穀物類や豆類や果実をもたらしたから、人類は、季節ごとの定住を始めるようになり、さらに環境がよい場所では、通年の定住も可能になった。旧石器時代では1~数家族程度の共同生活であったのが、旧石器時代の後期から新石器時代になると徐々に数が増えて、前1万3000年前~1万300年前の2700年間で、複数の血縁集団が共同で暮らす「村」が現われてくる。これが後の「都市」へと発展することになる〔『地球46億年の旅』45号10~11頁〕。
■定住と村落共同体の発祥
地球の温暖化に伴い、ドングリ、アーモンド、ピスタチヲ、日本では樫(かし)などの森の恵みがもたらされて、次第に定住化が始まった。定住化と村落共同体の形成は大きく4段階に分けられる。
(1)ナトゥーフ文化期(1万3000年前~1万300年前)
(2)先土器新石器A期(1万300年前~8800年前)
(3)先土器新石器B期(8800年前~7000年前)
(4)土器新石器期(7000年前~5800年前)
ナトゥーフ文化期とは、狩猟採集民が草葺きの円形の石造りの住居に数十人単位で暮らす段階を指す。人々は森林や川沿いに住み、狩猟の傍ら野生の麦類を採取した。複数の血縁が集まる「村」が生まれた。先土器新石器A期とは、幾つかの独立した円形の石/粘土造りの住居に分かれ、共同施設もあり、野生のコムギなどの蓄積も行なわれた。土器が作られ、村も拡大したが、いぜん野生の動植物を採取していた。先土器新石器B期では、住居が円形から複雑な立方体の組み合わせ構造へと変わり、複数の血縁集団による1000人単位の集落が形成された。コムギの本格的な人工栽培が行なわれ、野生種からより実り豊かな栽培種へ種を育てた。この間3000年ほどか。先祖の頭骨を飾るなど先祖崇拝の場も設けられた。B期の中頃までは、ガゼル、野生の牛、鹿、馬などを食物としたが、B期の後期には、山羊、羊、豚、牛などを家畜飼育するようになった〔『地球46億年の旅』45号14~15頁〕。
農耕は大きく3段階に分かれ、最初は野生のコムギなどを利用するために害虫を追い払ったりする「栽培」段階。次は、コムギなど特定の穀物を選択して利用しやすいようにする「専門栽培」の段階で、縄文時代の日本の栗の栽培などがこれに当たる。これに対して、「農耕的栽培」とは、灌漑などによって穀物などを育てる環境を人工的に作り出すことを指す〔『地球46億年の旅』45号18頁〕。
■祖先崇拝
定住は、当然、その土地の所有権問題を生じる。この場合、「先祖からの土地」はその土地の所有権の重要な要因と見なされたから、各部族で祖先を祀る祖先崇拝が行なわれた。トルコのギョベリック遺跡には数百メートル四方の丘陵に巨大が石柱が円形あるいは楕円形に林立して、石柱には人物や各部族の祖霊を表わす様々な動物が刻まれている。
1940年代、これら農耕民族から宗教が発祥したと考えられていたが、1990年代になると、同じ頃に各地で同様な祭儀が行なわれていたことが発見されるようになり、2000年以降、農耕は、ある一定の場所を拠点に広まったのではないと考えられるようになった。西アジアでは、巨大な肥沃な三日月地帯各地で農耕が行なわれ、それらが次第に西アジア型へと収斂したと考えられる。したがって、祖先崇拝も、複数の部族が統合して祖先を祀ることでその地域の各部族の利害を調整していたことになる。農耕と先祖崇拝は、土地所有と結びついて、以後の都市文明への土台となった〔『地球46億年の旅』45号16~17頁〕。
■世界の文明の発祥地
世界各地の農耕と家畜の大規模な発祥は、中国長江流域では稲、菱、瓢箪などの栽培や豚や水牛の飼育が行なわれ(8000年前)、中国黄河流域では、粟、きび類の栽培と豚の飼育が行なわれていた(7000年前)。西アジアの肥沃な三日月地帯では、コムギ、大麦、エンドウ豆、ソラ豆類などの栽培と、羊、山羊、豚、牛の飼育が行なわれた(8000年前)。メキシコ中部でトウモロコシ、インゲン豆、カボチャなどが栽培され(4000年前)、南米アンデス地域では、ジャガイモ、インゲン豆、カボチャなどの栽培と、アルパカ、リャマなどの飼育が盛んになった(3000年前)。アメリカ大陸東部では、カボチャ、ひまわり、などが栽培され(3000年前)、フィリッピンでは稲の栽培が行なわれた〔『地球46億年の旅』45号18~19頁〕。
■6回目の大量絶滅の危機
地球上の生命は、過去5回、大規模な大量絶滅を経験してきた。(1)顕生代の第一期「オルドビス紀」の末期(4億4000万年前)のOーS境界大量絶滅と、(2)古生代のデボン紀の後期(3億7000年前)のFーF境界大量絶滅と、(3)古生代のペルム紀末(2億5000万年前)のPーT境界大量絶滅と、(4)中生代の三畳紀末(2億年前)のTーJ境界大量絶滅と、(5)中生代の白亜紀末(6600万年前)のKーPg境界大量絶滅である。
ところが現在、6回目の大量絶滅の危機が進行していると言う〔『地球46億年の旅』47号20~23頁〕。しかもそれが、自然環境ではなく、人類が引き起こす大量絶滅で、白亜紀よりも速い速度で進行中だと言う。主な原因は、土地開発による汚染、動物の乱獲、外来種を無差別に持ち込むこと、二酸化炭素による地球の温暖化による環境変化である。生命種の絶滅速度は、人類が出現する以前の1000倍以上に達するというのだから穏やかでない。
危機に曝されているのは、地球上の「生物多様性」である。日本国内では、哺乳類の25%が絶滅あるいは絶滅危惧種に指定されており、鳥類では16%、維管束植物では30%が、同様の絶滅危惧種にされている。「生物多様性」は1988年にイギリスの保全生物学者ノーマン・マイヤーズが提唱した。ある地域に維管束植物が1500種以上生育し、しか原生の生態系の70%以上が改変されている場合、そこは「生物多様性ホットスポット」に指定される。2013年現在で、35の地域がこれに指定されている。
それらは、アメリカのカリフォルニア、中央アメリカ、カリブ海諸島、チリ冬季降雨地帯、地中海沿岸、アフリカ最南端、イランのアナトリア高原、中央アジア山岳地帯、中国南西山岳地帯、ヒマラヤ山脈南部、インド・ビルマ、フィリピン、マレーシア、ニューカレドニア、ニュージーランド、日本、ポリネシア・ミクロネシアなどである〔『地球46億年の旅』47号24~25頁〕。
■地球の未来の寒冷化
地球は氷期と間氷期を交互に繰り返してきているが、現在は1万年前に終わった「ウルム氷期」の後に続く「間氷期」の初期だから、「新生代後期氷河時代」(第四紀氷河時代ともいう)の後に来る間氷期に当たる。氷期と間氷期は約10万年周期で繰り返されるから、地球が現在次の氷期に向けて寒冷化していくことになる。
寒冷化の原因は、ミランコビッチ・サイクルだけでなく、氷床の変動、海洋や大気の循環などの要因が絡み合っている。また巨大な火山噴火も寒冷化をもたらす。火山から吹き上げられた硫化水素や二酸化硫黄が大気圏で硫酸エアロゾルとなって長く留まると、太陽熱を跳ね返すからである〔『地球46億年の旅』48号10~11頁〕。ところが、ここに人類が地球に及ぼす重大な要素が入り込んでくる。大量の二酸化炭素の排出によって、地球は急速に温暖化しているからである。今後の予測は難しいが、この気温の上昇は数百年は続くと思われるが、それ以後、数万年から数十万年かすると、急速に氷河期に入るのではないかと予測されている〔前掲書12頁〕。
■新たな超大陸の出現
地球上のすべての大陸が集まってできる超大陸は、これまで4回生まれては、その後分裂している。今後の地球の大陸移動は「パンゲア」を予測させるが、これまでにない集合を予測する説もある。2億5000万年後には、オーストラリアと南極大陸が結びついてひとつになり、これの北方には、ユーラシア大陸とアフリカ大陸と南北のアメリカ大陸が輪のように集合して巨大な超大陸が生じ、これに囲まれるように現在の大西洋が巨大な湖となる可能性が指摘されている〔『地球46億年の旅』48号16~19頁〕。
■太陽の老化と地球
この先50億年は、徐々に輝きを増しながら老化していくだろう。しかし、太陽は1億年に1%の割合で明るくなっているから、10億年後には、現在よりも10%も光度を増していることになる。そうなれば、海水の水蒸気はさらに気温の上昇を招き、海はいずれ完全に干上がってしまう。
太陽は50~60億年すると、収縮と膨張の均衡が破れて巨大化し始める。その結果、現在の太陽よりも半径が200~300倍に達する可能性がある。この時、水星と金星の軌道よりも大きくなるから、これら二つの惑星は言うまでもなく、地球それ自体も巨大化する太陽に飲み込まれることになるかもしれない。こうして太陽は宇宙に輝く「赤色巨星」と化した後、超新星爆発を起こすか、あるいは黒い太陽となり、無人無生物の地球がその周りを回り続けることになるかもしれない〔『地球46億年の旅』48号20~25頁〕。
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