時事告刻
                   トランプ大統領の就任
                   大阪コイノニア会で(2017年1月20日)
 
 昨日、トランプ大統領が就任しました。私はすでに、会誌『コイノニア』96号で、「アングロ・サクソン時代の終焉」と題して、一つの時代が終りを迎えつつあると指摘しました。今日は、この問題に関連して、我が国のこれからの有り様を考えてみたいと思います。これは、キリスト教でも教会でもなく、日本の国の問題です。これからの日本の有り様を次の四つのどれかに分けることができましょう。
(1)日本は、大和民族精神に根ざして、どこの国とも手を結ばない独自の道を歩むべきである。憲法を改変して、富国強兵路線に則(のっと)って、核武装を行い、太平洋戦争以前の道に戻るべきである。
(2)平和憲法を守り、どこの国とも手を結ばず、スイスのようにひたすら中立を保つべきである。
(3)ロシアには北海道に基地を置かせ、アメリカには本州に基地を置かせ、中国には沖縄に基地を置かせて、三国それぞれと手を結べば良い。
(4)北海道はロシアの領土とされ、本州の北半分はアメリカの領土にされ、四国と九州と沖縄は中国の領土にされる。
 (3)はある著名な知識人の提案です。しかし、私は、もしも日本が(1)の道を歩むなら、結果として、(3)よりもむしろ(4)のほうが現実味を帯びてくると思っています。ライオンと熊と虎に囲まれた日本犬が、孤立してキャンキャンと吠え立てるなら、ずたずたに引き裂かれて食われてしまうからです。
 しかし、今後の日本は、上にあげたどの道をも歩むことはないでしょう。それよりも、現在の政府も国民も、これからはゼッタイニしてはならないことと、どうしてもしなければならないことがあります。
(A)日本は、どんなことがあっても、中国と戦争をしてはなりません。万が一にも中国との戦争が始まったら、「勝った、勝ったが負けの始まり」だと心得てください。
(B)日本は、アメリカやロシアと手を結ぶだけでなく、韓国やフィリピンやヴェトナムや東南アジアの国々と、タイやインド、オーストラリアやニュージーランドなどの国々、できれば、イギリスやドイツなどのヨーロッパ、ウズベキスタンなどの中央アジアの国々、これらの国々と手を結ぶ努力をしなければなりません。間違っても孤立しないことです。
(C)21世紀の日本は、武力によらず、経済力によらず、宗教思想によって勝負することです。そうすれば、必ず勝ちます。
 現在、アメリカもイギリスも、フランス、イタリア、スペインなど、世界の先進国と言われてきた国々は、民族主義に根ざす孤立への道を歩み始めようとしてます。そういう世界的な孤立の流れの中で、一人日本だけは、どうしても孤立してはならない立場に置かれています。アジアの国々の間で「自由と民主主義」の旗印を鮮明に掲げて、国際的な連携を保たなければならない立場にあります。今や、国際路線を歩もうとするのは、世界でも日本だけ、国際的な提携を呼びかける立場にあるのは日本ただ一人です。それは理想主義にすぎないという人がいるかもしれません。しかし、理想とは、観念や主義ではない。それ以外に生き延びる道がないからこそ、どうしてもやり遂げなければならない道、これが本当の意味での「理想」の有り様なのです。国際的な連帯を維持するなら、日本は平和を保ち、どこの国にも負けることは決してありません。
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