時事告刻
日本人エクレシアの役割
大阪コイノニア会で(2017年2月19日)
 私は先に、「アングロ・サクソン時代の終焉」と題して話し、さらに、前回の大阪コイノニア会では、「今後の日本がしてはならないこと、しなければならないこと」について語りました。今回は、これらを踏まえつつ、「日本人エクレシアの役割」について、三つ大事なことをお話ししたいと思います。
(1)「アングロ・サクソン時代の終焉」などと言いますと、まるで、イギリスのアングリカニズムもアメリカのピューリタンニズムも、もはや不要になった。こう受けとめられるかもしれません。しかし、実際はその逆です。
 パウロは、旧約聖書のユダヤ教に違反してこれを捨てたと非難されました。しかし、事実はそうでありません。パウロは、イエス・キリストの御霊のバプテスマに与った私たちクリスチャンこそ、真の意味でアブラハムの子孫であり、アブラハム、イサク、ヤコブの神の霊性を正しく受け継ぐ者であると繰り返し語っています。ユダヤ人から勘当された彼こそが、実は旧約聖書の神とその霊性を、ギリシア人やローマ人に、さらに全世界の民に伝える大事な役割を果たしたのです。英語で言えば、"disiherited inheritance"、「非相続の相続」こそ、パウロの伝道が成し遂げた大事な意義なのです
 同様に、日本人のエクレシアは、キリスト教を強制されたのではありません。押しつけられたのでもありません。そうではなく、自ら進んで学び取ったのです。これからはアジアのキリスト教の時代が始まると期待できますが、私は、真のアジアのキリスト教は、この日本から始まるのではないかと信じています。誤解がないように言いますが、アングリカニズムやピューリタンニズム、ヨーロッパのプロテスタンティズム、さらにカトリック教会、ギリシア・ロシアの東方正教会にいたる過去のキリスト教の神学と伝統が、破棄されるのではなくて、私たち日本人のエクレシアを通じて、ユダヤ=キリスト教の本当の意義がきちんと受け継がれ、とらえ直されて、新たな時代へ適応できるように前進する。これが日本のキリスト教に与えられた使命だと信じるからです。日本では、キリスト教の伝統は17世紀のキリシタンの殉教に始まります。あのとき流された殉教者たちの血は、300年を経た今もなお、私たち日本人のエクレシアを支え続けているのです。
(2)新しいアジアのキリスト教が訪れるためには、もう一つ大事なことがあります。日本人のエクレシアは、旧約聖書と新約聖書の正統キリスト教を学問的にも神学的にもきちんと受け継いでいます。それも、欧米のキリスト教の最高レベルの神学をきちんと学び取ってきました。これからのアジアのキリスト教において、大事なのは、従来型のキリスト教の延長ではなく、宗教的な背景の全く異なるアジアにおいて、キリスト教がどのような新たな展開を見せるのか?という点にあります。その際に、ちょうど、四福音書の記者やパウロが、イエス・キリストの御霊の働きによって、旧約聖書の霊性を再検討して、そこから、人種や民族性を超えた全く新しい霊性を見出したように、アニミズムやシャーマニズムや家系信奉など、アジアの多様な国や民族の過去の宗教をイエス・キリストの福音の真理によって再検討し、受け継ぐべきものと解消すべきところとを見出さなければなりません。
(3)今度はこれとは一見真逆に見えますけれども、これからのキリスト教は、仏教徒を異教徒として排除し、神道を悪霊的だと弾劾するキリスト教から、他宗教とも平和と寛容を維持するキリスト教へ変革されなければなりません。先の大戦後から現在までは、異教徒排除と神道悪霊視のキリスト教は、日本国内を含めて、どこからも非難されませんでした。これは、実に驚くべきことなのです!しかし、異教徒排除と神道悪霊視のキリスト教が世界のキリスト教の共通認識になるなら、日本人はどうなるのでしょう?こんな状態で日本人は、韓国や中国の一般国民は言うまでもなく、韓中のキリスト教徒とさえ平和を保つことができません。せめて、日韓中のエクレシアの民だけでも、主の恩寵の下にあって相互に赦し合い協調しないならば、アジアの平和は決して訪れません。国家同士が敵対するからこそ、エクレシアの民は、国家と民族を超えて、赦しの十字架のもとに交わりを維持しなければならないのです。多様な文化と宗教的な伝統を持つアジアにおいて、これまでの欧米のキリスト教の伝統だけでは、新たな道を切り開くことができません。温故知新こそ、これからのアジアにおいて、日本人エクレシアに課せられた使命です。御霊の導きにある福音の真理に沿って、キリスト教を正しく伝える重要性に比べるなら、信徒の数が少ないことなど、何ら問題になりません。日本人のエクレシアの皆さんは、どうぞ、このことを自覚してください。
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