わたしは、不思議な導きで、あるカトリックのご夫妻とカトリック教会で毎週朗唱される「典礼」を勉強する機会に恵まれています。この勉強会を通じて思うのは、カトリックの方々は、プロテスタント後遺症とでも言うべきか、典礼で朗読される聖書の御言葉を自分で学んだり研究したりすることには消極的で、その分、教会の行事に熱心に参加する傾向が見られることです。しかし、カトリックとプロテスタントという区分けは、16〜17世紀のキリシタン時代ならいざ知らず、
現在ではもう意味を失っているように思います。とりわけ、欧米のキリスト教時代から、日韓中などの東アジア・キリスト教圏の時代へ向かおうとしている現在、かつての両派の争いは、もはや過去のものと思うべきです。だから、これからのカトリック教会も、東方正教会やプロテスタント諸派と同じに、教会の信者の「個人の霊的な成長」を重視する時代に入りつつあることを洞察しなければならないでしょう。「聖書と典礼」の「聖霊降臨の主日A年」(2017年6月4日)の学びでは、聖霊のお働きが、「一人一人」と「全体」の両面から描かれているのが分かります〔前掲書2頁〕。幸い日本のカトリックの方々には、的確な解説と注と地図が付いている「フランシスコ会訳聖書」やバイツェルの『聖書大百科』(船本弘毅他訳)など、すぐれた聖書訳と参考書があります。これらを活用すれば、一般の信者の方々でも、典礼の御言葉をより深く学ぶことができます。典礼は、教会で神父様から解釈してもらうべきもので、一般の信者がそれぞれ自分で解釈すべきものではない。もしも、司祭や信者の方が、このように思って、信者各位の聖書解釈に危惧を感じておられるなら、とても残念なことです。ただし、こういう事情は、日本人のカトリックの方々だけでなく、プロテスタントの一般信者も同様です。聖書の言葉を解釈する知的能力も教養も十分具わっているのに、一人一人が、自分で聖書の勉強を始めてほしいのです。言うまでもなく、その勉強は、一人一人に与えられるイエス・キリストの聖霊のお働きと不可分です。ですから、三位一体の聖霊の働きを祈り求めつつ、教会における自分の霊的な個性を成長させてほしいのです。
「日本人の」と特定したのには、わけがあります。昨今の東アジアの核をめぐる状勢に照らし合わせる時に、現在の日本のクリスチャンは、プロテスタント、カトリックを問わず、今後の日本の平和のためにかけがえのない大事な使命を帯びていることを知ってほしいからです。このために、日本のキリストのエクレシアは、韓国のエクレシア、さらに中国のエクレシアと手を携えて、アジアの平和を守るという重要な使命を主から与えられているのです。 キリスト教徒は、イエス様の霊性に根ざす「イエス様の出来事」がその原点であり、そこから流出する霊性から生じたのがキリスト教会です。カトリック教会の典礼は、この霊性を伝える大事な働きするものです。どうか、このことを自覚して、毎週朗読される典礼の勉強を始めてください。
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