英語聞き取り試験の民間委託案
        (2019年11月2日)
  文化省が英語の聞き取り試験を民間に委託する案を見送ることに決めた。民間委託の聞き取り試験案が多くの大学から受け容れられなかったからであろう。日本の文化省は、長年かけて、実用的な英語を話せる日本人を育てようと、中学と高校の英語教育を変えようとしてきた。ところが、肝心の大学入試が、昔ながらの読解力中心の英語の試験なので、高校以下の英語の実用化がなかなか進まない。これをなんとか解決しようと、文化省は、民間委託の聞き取り試験案を強力に推し進めようとして失敗したのである。どうやら、今の日本の大学は、英語をうまくしゃべる日本人よりも、英語をその文法をも含めて「きちんと」理解できて、難解な英語でも読み解くことができる知能のある日本人のほうを求めているというのが本音らしい。文化省と大学との間に潜むこの分かれ目は、現在の日本のキリスト教においても通底するところがある。いったい、今の日本では、アメリカ渡りの「実用的な」キリスト教を受け容れて、多くの人たちにこれを広める実用的なキリスト教が求められているのか? それとも、欧米のキリスト教を「きちんと」学んで、これを日本流にとらえ直して、日本の思想と宗教に役立てようとする「知的な」キリスト教が求められているのか? この二つが、相容れないままで、今もなお見送られている。
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