日本とコイノニア会
             (京都集会2021年10月30日)
 前回はアジアのキリスト教の危機、とりわけ、米中の対立状態の狭間に位置する日本と韓国と台湾に臨む危険性と、これに対処するために、極東アジアにキリスト教圏を形成することが大事であることを強調しました。今日は、目を転じて、日本国内とコイノニア会の福音についてです。わたしは、長いこと、イエス様の福音とは何か?ということを皆さんと一緒に追求してきました。これは、パウロが言う「福音の真理」を追い求めてきたことを意味します。しかし、これからは、そうではない。今からは、イエス様の福音こそ、この国の民の命を守り、この国を護り、アジアの平和を護る「真理」であることを広くこの国の民に伝えなければなりません。言い換えると、福音こそが「まことの真理」であるという「真理の福音」を日本の民に告げ知らせる時が来たのです。「福音の真理」から「真理の福音」へです。この点から見る時、国内に潜む二つの気がかりと、一つの希望について語り、次いで、コイノニア会の福音について、二つの希望と一つの気がかりについて、お話ししたいと思います。
  現在の日本の国内の政治情勢で、気になることが二つあります。
(1)現在の日本の政治権力は、自民党とこれが支える総理による政府が握っています。官僚は、政府に忖度するあまり、政府のいいなりに動いています。巨大企業は、その政権を支えて、ひたすら自分たちの利益を守るために莫大な援助をしています。現在の法律では、総理が、この政府の強大な権限を握っていますから、こういう状態は、独裁者が生まれるのにまことに都合の良い条件です。
(2)もう一つ、今の日本で気になるのは、若い人たちの動向です。ミャンマーの若者たちは、国内で、処罰や投獄、殺されるかも知れない身の危険を感じながら、必死に、政権を批判する運動を行なっています。香港の若い人たちも、賢明に機敏に、反政権運動を行なっています。ところが、日本の若い人たちは、選挙にあまり関心がないのです。「けっこうなことだ。日本は、若者が、それだけのんびりできるから、平和で、不自由がないよい国なんだ。どうか、選挙の日には寝ていてくれ。」自民党の議員たちはこう言って喜んでいます。これが、私には気になります。
(3)それにもかかわらず、現在の日本で、独裁者が出ないのは、<独裁を唱える理念>そのものが、まだ見いだせないからです。極右の国粋主義、例えば、米中から離脱して、日本が単独で核武装するなどということは、国内的にも、国際的にも、現実には危険だからです。極右の独裁者は、まだはっきりと国の理念となる路線を見いだすことができないのです。
 しかし、これからの日本は、どこの国からも離れて、針鼠(はりねずみ)のように核武装して、江戸時代の鎖国状態へ戻るほうがいいと真面目に唱える人たちが出てこないとも限りません。昨夜(2021年10月13日)のNHKBS3のテレビの座談会で、「徳川家康のキリスト教の禁令」は、正しい選択だったかどうか?ということを採り上げていました。出席者全員が、家康の「キリスト教排除」は、当時の国際情勢から見て、正しい選択だったと結論づけていました。これが直ちに、現在の日本からキリスト教を排除する方向へつながるとは思えませんが、今のこの時期に、こういうことを採り上げる事それ自体の意味を疑いたくなります。
 現在の日本に、独裁者が現れるのを防いでいるのは、現在の政治権力者たちではありません。はっきり言えば、マスメディアでさえ、あてにならない。現在の日本を支えているのは、「一般の日本人」です。日本のインテリたちが、上から目線で「ポピュリズム」などと軽視する「下働きの普通の日本人」、ごく普通の「日本の民」が、どこの国の人たちよりも誠実で立派だからです。立派なのは、国民のほうであって、国家を担う権力者や財閥や知識人ではありません。
 こういう状況にあって、今の日本に大切なのは、国内に「イエス様を信じる民」が形成されることです。このために希望となること二つと、気になることを一つお話しします。
(1)コイノニア会には、福音的な個性と宗教的な寛容を身につけたMさんがいます。この福音をそのまま多くの人たちに伝えればいいのです。どうぞ、若い人たちにその福音を教えてあげてください。
(2)同時に、コイノニア会には、口を開けば「他者との交わり」を主張するKさんがいます。イエス様の福音から見て、とりわけ政治的な問題をどのように判断するのかを語ってください。これと併せて、Oさんには、イエス様の福音によって、社会福祉の問題を取り上げて語ってほしいです。ここにおられる三人を併せるなら、今の日本人に向かって広く伝えるべき「イエス様の福音」が、すでにできています。
(3)一つ気がかりなこと、それは、韓国の反日的なキリスト教です。家康の時代には、ポルトガルとスペインの宣教師たちが、日本の仏教を否定して、キリスト教の布教を通じて、家康が統一しようとしている日本を侵略しようとしていました。これが、家康のキリシタン禁令の理由であると言われています。今、キリスト教の盛んな韓国が、世界に向けてしきりに反日を唱えています。これが、現在の日本の人たちに、「キリスト教=反日」のイメージを作り出す危険があります。こういう事態は、日本に福音を広める上で大きな障害になります。幸い、和宏が、今、ロスアンゼルスにあるフラー神学校で、牧師の資格を取る準備を進めています。日本の神学校を出た日本人が、日韓のキリスト教の融合を説いても、韓国の人になかなか聞き入れてもらえません。アメリカの神学校の人なら、日韓両方のキリスト教徒が、耳を貸すのではないかと思います。
【付記】小沢かおり(1984年朝日入社)「若者目線で政治を問う覚悟」〔『朝日新聞』2021年9月28日〕
 2019年の参議院選挙では、10代の4割が投票に行き(行かなかったが60%)、20代の3割が選挙に行きました(行かなかったが70%)。・・・・・ 私も記者時代は「有権者の〇割の審判しか受けていない」などと書いて終わっていました。ただ、若い人たちが、例えば性的少数者や在留外国人の人権、環境問題などに声を上げる姿は、ネットでリアルに、よく目にします。2年前の参院選後の記録を探すと、読者から「投票に行かない若い人の思いも探(さぐ)ってほしい」などの声が届いていました。若い人が投票しないのはなぜなのか。前回の衆院選後の意識調査を見ました。・・・・・「政党の政策や候補者の人物像など違いがよくわからなかったから」(2割)とあります。さらに同じく2割、若者の5人に一人が上げた理由を見て、私は一瞬胸が詰まりました。「自分のように政治のことが分からない者は投票しないほうがいいと思ったから」。20代の無投票が、他世代よりも際立っています。私は、投票を<個人のモラル>に帰していた罪を思いました。・・・・・若者は、政治との接点がないのと同じくらい、メディアにも触れていないんです!」
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