市川喜一氏の出版を記念して
(2022年8月3日の研究会で発表)
市川さん。『真理の霊が来るとき』日本基督教団出版局(2022年)のご出版、おめでとうございます。 この本は、「真理の御霊のリアリティー」を証しする、画期的な内容を秘めていて、市川さんが、最後に行き着いた境地を分かりやすく、「まこと」をこめて書いている名著です。ご著書は、カトリックの神学者の篤い推薦を受けて、日本基督教団出版局という日本のキリスト教界を代表する出版社から出されました。この出来事は、市川さんがこの著作で唱えている「復活者キリストから降る真理の御霊のリアリティー」が、今ようやく、聖霊派の教会だけでなく、自由神学に基づくキリスト教界にも共通して認められたことを証しするものです。
想えば、今から30年ほど前の日本のキリスト教界は、事情が全く異なりました。異言を伴う聖霊の働きは、当時「熱狂主義」という烙印を押されて、偏見の目にさらされていました。聖霊のお働きとキリスト教の学問的な聖書神学者との間には、「お互いが対話できる共通の基盤さえなかった」のです(私市元宏著『聖霊に導かれて聖書を読む』新教出版社1997年:153頁参照)。私(私市)は、思い切って、この問題に挑み、学問的なキリスト教神学に基づく聖書信仰と、異言を伴う聖霊の働きとが、相補う関係にあることを日本で初めて、自分の著作で指摘しました。
あの時から25年が経ちました。今ようやく、市川さんのこの本によって、「御霊の真理のリアリティー」が、日本のキリスト教界全体に公認されたのです。この成果が、この研究会の大事な使命であったことを今にして悟ります。研究会を指導してこられた水垣さんに、ここで改めて、「有り難うございました」。ただし、研究会の使命はまだ終わっていません。これからは、「キリストの御霊のリアリティー」とは、「具体的にどういう事か?」これが問われるからです。これから、この研究会は、この問いに応えなければなりません。
終わりに一言。市川さんは、ヨハネ福音書が、「復活のキリスト」を証しすると見ています。一方で私(私市)は、「恩寵と真理に満ちた受肉」(ヨハネ1章14節)」のヨハネ福音書を信じています。「復活者キリスト」と「イエス・キリストの受肉の恩寵」とをイースターとクリスマスにたとえるなら、イエス・キリストの聖霊のお働きは、そのどちらか一方だけでなく、両方がそろうことで初めて、完全な「真(まこと)の御霊(みたま)」になると言えます。
2022年7月上旬 私市元宏