アメリカの「自由」への危機
『朝日新聞』(2025年10月15日夕刊)
「時事小言」藤原帰一
アメリカでは、法にのっとる警察力の行使が、法を顧みない権力行使にとって代わってしまった。「不法移民」への排除は、すでに、アメリカに在留資格を持つ移民一般への排除にまで広がる。しかも、排除される移民のほとんどが「白人」でない。白人でないアメリカ国民の排除である。私は日本人であるがゆえにアメリカの学校でいじめられた。英語の話せなイタリアからの移民も同じで、 ユダヤ系の生徒もいじめられた。
1990年代に、アフリカ系のバラク・オバマが、大統領になったときには、アメリカは、ここまで、(非白人の)自由な国になったのかと驚いた。ところが、オバマ政権の誕生が、アメリカでは、人種・民族による差別が拡大するきっかけになったのである。アメリカの多数派が、白人から非白人へ「置き換えられる」のではないか?という「置き換え」への恐怖が白人に広がったからである。
「多様性・公平性・包摂性」(difference/equity/inclusiveness)(DEI)は、アメリカの民主主義の基本原理である。しかし、アメリカでのDEIは、今や、排除すべきものになった。アメリカは、白人優位と男性優位を公然と認める社会に変わった。1960年代の後半には、アメリカで、(キング牧師などの)公民権運動の拡大が、拡大を排除しようとする白人の暴力を呼び起こした。今や、トランプのアメリカは、「歴史を逆回し」するように、かつての1960年代の後半の、暴力と荒廃へ向かっている。
【危機への応答】
大祭司や長老たちが遣わした勢力に接して、イエス様にある自由に与る十一弟子が「散らされた」。このように、アメリカの「自由」も散りじりにされた。このように断片化された「自由」を、再び集めて、その力を取り戻し、一つにまとめてその力を発揮する道こそが、「十字架から復活されたイエス・キリスト」のお働きである(マルコ14章27〜28節)。異言や預言を伴う御霊のバプテスマとは、まさに、こういう目的で与えられる御霊のお働きである。
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