2章 テルトゥリアヌス
  テルトゥリアヌス(155年頃〜220年以後)は、エイレナイオスに次いで、正統信仰の樹立者と見なされています。カルタゴ出身の司祭で、ラテンの法律家としても弁護士としてもローマで知られていました。法に基づいてキリスト教信仰を異端から守り弁護しました。厳格な禁欲主義的な傾向のために、モンタノス派に入りますが、聖書と使徒信条に基づいて、三位一体の神観を明確に提示しました。彼は、「肉の贖い」と「肉体の復活」を強調し、ロゴス(言)とラティオ(理性)とウイルトウス(力)において、父と御子と聖霊が一体であることを証ししました。その三位一体(trinitas)は、経綸(オイコノミア)を軸として、父と御子の位格(ペルソナ)との区別を太陽とその光にたとえて、両者の同一性を提示しています。聖霊は三位一体の「体」であり、受肉は「神と混じった人間」(Homo Deo mixtus)であり、十字架は「恥ずべき事であるがゆえに私は恥じない。神の子が死んだ。ばかげたことであるがゆえに信じる。そして、葬られ、復活した。不可能であるがゆえに確かなことである」と論じた。人は、ひとたび信じたらそれ以上に探索してはならない〔『原典古代キリスト教思想史』(1)162〜237頁〕。彼は、罪性においても、復活においても、「肉体」と霊性とを切り離さなかったし、洗礼の水と霊とを区別することをしなかったから、ラテンの論理をもって、あえて物質と霊とを区別するグノーシスと対照的である。その上で、ラテンの論理を逆説的に通すという「離れ業」をやってのけた傑物である。〔『原典古代キリスト教思想史』(1)162〜237頁〕
          正統性と異端化へ