(1)三位一体神の背景
          
■三神について
【国の三神】古代から、国家が形成される時には、三~が国の護り神になっています。紀元前6000年頃のパレスチナのエリコでは、父と母と子の三~が祀られました。これは、三~の最も基本的な形態です。古代バビロニアでは、アヌ(天空)とエア(大地)とその息子マルドクの三~がいました。古代エジプトでは、オシリス(冥界の王)とイシス(豊穣の女神)と彼らの息子ホルス(鷹=太陽)の三~がいましたが、エジプトでは、太陽神ラーの影響を受けて、アメン(太陽)とムト(アメンの配偶女神)とコンス(月)の三神の時代がありました(前746年〜前332年頃)〔小林登志子『古代オリエントの神々』中公新書(2019年)〕。ギリシアの三神は、ゼウス(天)とポセイドン(海)とハデス(黄泉)です〔TDNT(8)216〕。
 なお、太陽神ミトラは、ほんらい契約を司(つかさど)る神で、インド(ミトラ)やイラン(ミスラ)やギリシア(ミトラス)やローマ(ミトラ)で広く信じられました。イランのゾロアスター教では、ミスラと呼ばれる幼児神がいます。アフラ・マツダー神とその后アナーヒターと、その二人の間に生まれた息子ミスラとの三神は「聖家族」とされました。この息子ミスラは、「神の子イエス」と関係しているという説があります〔小林登志子『古代オリエントの神々』〕。御存知のように、『古事記』では、天地(あめつち)の生まれが、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)と高御結産巣日神(たかみむすひのかみ)と神産巣日神(かみむすひのかみ)の三神で始まります。
■聖書の三神
【旧約の三神】旧約聖書に出てくる「三神」と言えば、アブラハムに顕われた三天使がいます(創世記18章2節)。この3人は三位一体の主なる神だと言い伝えられています。「3」の数秘としては、「3日後の復興」(ホセア6章2節)、主の御霊に具わる三つの特徴(イザヤ書11章2節)があり、クムランでは、王と祭司と預言者の三メシアが待望されていました。
【新約の三神】新約聖書で「三神」に通じるのは、イエス様の山上の変貌で顕れた「イエスとモーセとエリヤ」(マルコ9章4節)でしょう。「3」の数秘では、「3日目の復活」(マルコ8章31節)があり、イエス様がキリストであることの三つの証し「霊と水と血」があります(第一ヨハネ5章7節)。福音の三大要素は、「愛と信仰と希望」です(第一コリント13章13節)。特に、聖霊が異邦人にも降ることを証しするペトロとコルネリウスの物語では、「3」が大事な意味を持っています(使徒言行録10章3節/7節/18節/31節/40節)。ゲツセマネで、イエス様は、三度祈りました(マタイ26章44節=マルコ14章41節)。また、ペトロの三度の裏切りと(マルコ14章30節)、イエス様のペトロへの三度の問いかけ(ヨハネ21章17節)も大事です。過去・現在・未来のキリストとしては、ヨハネ黙示録1章4節があります〔TDNT(3)107--108〕。新約聖書で三位一体を示唆する箇所は、パウロでは、第一コリント8章5〜7節があり、福音書ではヨハネ14章26節です。
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