この絵は、倉敷の大原美術館にあるスペインの画家エル・グレコの『受胎告知』です。グレコ(1541−1614)は、ギリシア生まれなのでスペイン語で「グレコ=ギリシア人」と呼ばれました。マリアは、神の言葉を意味する聖書に左手を当て、右手を少しあげて祈りによる従順を示しています。身にまとっている青と赤は、マリアとキリストが描かれるときによく用いられる色で、赤は慈愛と受難と贖いを、青は天国を指す曙をあらわしています。ここでのマリアは、ヨハネ黙示録12章にでてくる「信仰の子供たちを産む女性」を象徴する12の星の冠を帯びています。天使ガブリエルは、手を上にあげて「天から遣わされた者」であることを示しています。胸に差した白百合は純潔な心を象徴します。この絵は、暗い闇を突き抜けて降る聖霊の鳩が、神の言葉を祈りをこめて読む人の心に入り込んで宿る様子を描いていると解釈することができます。

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