あとがき  
  思えば、甲南女子大学に勤めるようになり、一五年ほどの間、故宮西光雄先生のもとに集う英文学試論会のメンバーと共に『コウマス』を読み、これを授業でも講読するようになったのが、私の『コウマス』研究のきっかけであった。これが基になり『コウマス』の原文に注と訳を付けたのを出版することができた〔Miltom: Comus. 山口書店(一九八〇年)〕。それから一〇年ほど後に、この仮面劇に関する日本語の研究書の必要を強く感じて、『ミルトン:ラドロウ城の仮面劇』(アポロン社:一九九二年)を出した。これがこの仮面劇の原題でもあり、『コウマス』という通称ではなく、あえてこの題名を用いた理由は序説をお読みになれば分かっていただけると思う。その間日本ミルトン・センターで『コウマス』について発表したり、日本ミルトン・センターの総会でこれのシンポジアムを開いたりする機会が与えられた。さらに国際ミルトン・シンポジウム(IMS)で発表したり(一九九一年)、イギリスのバンゴールでのシンポジアムで『コウマス』のセッションの司会を担当する機会が与えられた。今回の訳文と注と二つの解説は、この著作によっている。神話の固有名詞は、原則として高津春繁著『ギリシア・ローマ神話辞典』(岩波書店)によったが、すでに日本語として定着していると思われるものはそれを用いた。これは、これら数々の恩恵の賜である。英文学試論会の皆さんと日本ミルトン・センターの学友たちに心からお礼を申し述べたい。内助の功とともに妻の好意に感謝の気持ちを表したい。  
二〇一四年 秋 著者
                       ミルトンとその思想へ