この問題については、景教との関係で以前から指摘されてきました。しかし日本では、景教の文書がキリシタン弾圧の影響で禁書に指定されたためか、長らくなおざりにされてきました。明治以後になって、ようやく少しずつ研究が進み、現在では次のような著書が出ています。明治44年に出版された佐伯好郎著『景教碑文研究』復刻版(大空社、1996年)、久保有政/ケン・ジョセフ著 『聖書に隠された日本・ユダヤ封印の古代史』(2)〔仏教・景教篇〕(徳間書店、2000年)。これには、原始キリスト教がインドだけでなく中国へも伝えられたこと、また、私がこの章の結びで述べる景教が、仏教よりも早い時期(4世紀)に日本へ渡っていた可能性があること、さらに空海と景教との関わりなどが詳しく述べられています。そこで語られている事柄の多くは、推定に基づく部分が多く、歴史的に実証されるに至っていない部分もありますが、現段階では、それもやむをえないでしょう。今後のこの方面での研究へのひとつの指針となりうる著作であると思います。